ブラックフライデーに隠された企業戦略と「意味の転換法則」
2025年11月16日
今回もコラムを読んでいただきありがとうございます。
毎年11月下旬になると、テレビやネットの広告で
「ブラックフライデー」という言葉を多く目にするようになりました。
日本で「ブラック」という言葉は、
「ブラック企業」のようにネガティブな意味合いで使われがちです。
では、この大規模セールの「ブラック」は何を指しているのでしょうか?
この由来と普及の背景を帰納的思考で分析することで、
企業側が持つ消費を促すための深い戦略と、
文化が伝わる際に働く「意味の転換法則」を読み解くことができます。
観察された三つの事象と由来の変遷
まず、ブラックフライデーの語源に関する具体的な事象を観察します。
・事象A(名称の起源):警察官の皮肉
由来: 1950年代、アメリカのフィラデルフィアで、
感謝祭(11月第4木曜)の翌日に買い物客が殺到し、
街が大混乱と大渋滞を起こしました。警察官がその多忙で最悪な一日を、
皮肉を込めて「暗い金曜日(Black Friday)」と呼んだのが始まりです。
当初は、ネガティブな意味でした。
筋道: 混乱とネガティブなイメージ。
・事象B(意味の転換):黒字への書き換え
転換: 1980年代になると、小売業界はこのネガティブな呼称を逆手にとります。
欧米の簿記では、損失を赤インク、利益を黒インクで記す慣習があります。
メディアを通じて、「この日は一年で最も売上が伸び、
赤字から黒字(in the black)に転換する日だ」というポジティブな解釈が広まり、
これが定着しました。
筋道: 否定的な言葉を経済的な利益へとポジティブに意味を書き換える。
・事象C(日本での普及):ニーズの輸入
普及: 日本では、感謝祭の文化がないため伝統的背景はありませんが、
2016年頃に大手小売業が本格的に導入したことで急速に広まりました。
筋道: 「お得に買いたい」という消費者の購買意欲を刺激する新たなセールイベントとして、
意味の背景を気にせず受け入れられた。
帰納的思考で読み解く「企業戦略の法則」
これらの事象を総合し、「企業はなぜこのイベントを世界中に輸出し、積極的に利用するのか?」
という問いに対する共通の法則(結論)を導きます。
企業戦略の法則(結論): 「企業は、海外イベントの持つ宗教的・伝統的背景を意図的に薄め、
そのイベントが持つ 『大規模な割引』という経済的フックのみを抽出する。
そして、それを『年末商戦のフライングスタート』 として位置づけ、
消費者の 『お得感』 という個人的欲求を満たすことで、
新たな消費習慣を創り出し、利益の最大化を図る」
これは、以前分析したハロウィーンの「娯楽への転換」と同じく、
イベントの持つ意味を「文化的な価値」から「経済的な価値」へと最適化する、
現代ビジネスにおける普遍的な法則です。
この法則を見抜く力こそが、広告やニュースの裏に隠された真の意図を読み解く、
帰納的思考の力と言えるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。