お盆の起源と、なぜ夏に怪談なのか?
2025年8月3日
今回もコラムを読んでいただきありがとうございます。
毎年8月になると、お盆休みがあり、ご先祖の霊をお迎えして供養する行事が行われますね。
この習慣は、いつ、どのようにして生まれたのでしょうか。
そのルーツを探ると、何かを創り上げる「抽象化のプロセス」が見えてきます。
お盆の正式名称は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といい、古代インド語の「ウラバンナ」(逆さづり)
という言葉に由来します。
これは、仏教の開祖であるお釈迦様と弟子の目連のお話が起源とされています。一方、日本では古くから先祖供養の習慣がありました。この仏教の「死者を救う」という考え方と、
日本古来の「先祖を供養する」という文化が合わさることで、現在の「お盆」という独自の行事が創り上げられたのです。
お盆の時期によく見られる盆踊りも、その起源はご先祖様を慰め、
無事にあの世へ送るためとされています。
また、ご先祖様への感謝と生きている喜びを表現する目的もあります。
そして、お盆の時期が近くなると、
テレビで怪談やホラー番組がよく放送されますね。
これは、単に「怖い話で涼しくなる」という俗説だけではありません。
夏の怪談の起源は、江戸時代にさかのぼります。
当時の芝居小屋では、夏は客足が遠のくため、
若手俳優が「四谷怪談」などの怪談物を上演し、
大がかりな仕掛けで観客を楽しませていました。
また、お盆にはご先祖様の霊だけでなく、祀る人がいなくなった無縁仏や怨霊も
この世に戻ってくると考えられていました。
そのため、ご先祖様を慰める「盆踊り」が始まった一方で、
浮かばれない霊の存在を語る「怪談」もまた、
人々にとって意味のある文化として発展していったのです。
このように、お盆や盆踊り、そして怪談といった文化は、
抽象的な「先祖を敬う気持ち」や「生きる喜び」、そして「死者への畏怖」といった概念を、
具体的な「供養」や「踊り」、そして「物語」という形で表現し、
人々が共有できる文化に創り上げたものです。
異なる思想や風習を一つに結びつけ、新しい意味や形を生み出す。
これこそが、物事をより本質的に捉え、新しい価値を創造する「抽象化」のプロセスです。
先人たちは、目に見えない大切なものを形にする知恵を持っていたと言えるでしょう。
皆さんの周りにある身近な文化や習慣も、深く掘り下げてみると、
様々なものが結びついて生まれた「創造物」かもしれません。
ぜひ、「なぜだろう?」という視点で、その起源を調べてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。