文化と言葉の相互関係 ~のんきなタヌキから~
2024年10月12日
今回もコラムを読んでいただきありがとうございます。
つい最近家の近所で、民家のバケツから水を飲むタヌキを見かけました。周りに人が集まっても気にしないのんきな姿が印象的で、なんて可愛いのだろうと思わず笑みがこぼれましたが、この警戒心のなさでいろいろ大丈夫なのか…?と心配にもなりました。
昔話『かちかち山』に代表されるように、タヌキは昔から悪さをするキャラクターとして描かれてきました。しかし、実はその原因の多くはアライグマによるものだと言われています。(タヌキとアライグマはよく似ていますよね)これは海外でも同じ認識のようで、先日見た映画でも、主人公がアライグマのゴミ漁りに悩まされていました。
タヌキ自身は、どちらかといえばのんびり屋なんです。未来創造ろんり教室のキャラクター「ノンタ」も、タヌキがモデル。彼もまたなんともとぼけた性格で、ラーメンとアンパンが大好きという、愛すべきキャラクターです。
さて、日本でタヌキは広く親しまれていますが、実は世界的に見ると希少な動物です。日本にいるホンドタヌキは、実は日本固有の種。中国大陸の一部を除いては、ほとんど他の地域では見られないんです。実際、シンガポールの動物園にタヌキのカップルが贈られた際には、まるでパンダのように冷暖房完備の専用舎が用意され、歓迎式典まで開かれたとか。(我が家の近所ではバケツから汚い水をがぶ飲みしているのに…)世界的には非常に珍しい動物なんですね。
日本ではなじみ深いタヌキ。慣用句にもよく登場します。例えば「狸寝入り」。タヌキは臆病でよく気絶するのですが、それが「寝たふり」のように見えたことが「狸寝入り」の由来だとか。では、タヌキのいない国では「狸寝入り」をなんというのでしょう。実は、英語では「a fox’s sleep」、つまり「狐寝入り」と言うんです!キツネのずる賢いイメージから来ているのかも。これはつまり、その国の環境(生態)によって表現が変わる面白い例なわけですね。
言葉の違いと言えば、他にもこんな例があります。日本では一般的に7色とされる虹ですが、アメリカでは藍(インディゴ)を除いた6色とされています。勿論逆に8色と多い国もありますし、2色(!)とする文化圏もあるんですよ。これは、色を「明るい色」「暗い色」の二つに分けてとらえる言語を用いているためだとか。
虹は自然現象なので、世界のどこでもおおむね同じように見えるはずですが、文化や言語によってそのとらえ方に差が出ることが分かります。
このように、言葉というのは、その国の歴史、文化、思想、環境、生態…いろいろな影響を受けて成り立っています。この視点は外国語学習にも役に立つので、まずは日本語から、色々な言葉の語源を学んでみるのも面白いかもしれませんね。最後まで読んでいただきありがとうございました。