棚から牡丹餅ってうれしい?

2024年9月21日

 今回もコラムを読んでいただきありがとうございます。

 もうすぐで秋分の日ですね。春分の日と同様に、太陽が真東から昇り、真西に沈む日であります。きっと理科の授業で、太陽の動きと関連させた言葉として、春分の日秋分の日を皆さんは学ばれたのではないでしょうか。ご存じの方も多いでしょうが、実はどちらの日も、以前のコラムでご紹介した旧暦の二十四節気の一つなのです。どちらも昼夜の長さがほぼ等しくなる日で、春分の日を境に冬の寒さから段々と暖かくなるのに対し、秋分の日を節目に夏の暑さから徐々に涼しくなります。そして、両日をそれぞれ中日として、前後三日間を合わせた七日間を彼岸といいます。これは日本独自の風習で、この期間は先祖供養をします。また、春のお彼岸はその年の豊作を祈るのに対し、秋のお彼岸はその年の収穫を感謝します。「暑さ寒さも彼岸まで」ということわざには、このような背景があったのですね。

 さて、「棚から牡丹餅」ということわざの意味を皆さんは知っていますよね。広辞苑によると、”思いがけない好運がめぐってくることのたとえ”と書かれています。甘党の私にとって、牡丹餅は好物ですが、棚の中に放置された牡丹餅を見つけても、食べる気にはなりません。このことわざを調べてみると、棚の下で口を開けて寝ていたら、たまたま棚から落ちてきた牡丹餅がその口の中に入った、という昔話が由来だそうです。昔は今と比べて、砂糖や餡が貴重で、一部の有力者しか牡丹餅を食べることは出来ませんでした。そんな背景を考えると、確かに棚から出てきた牡丹餅は好運なことだと思います。しかし、ほこりまみれの棚から出てきた牡丹餅を、あなたは素直に喜んで食べますでしょうか。

 春の彼岸では、この牡丹餅を仏壇に供えます。一方、秋の彼岸では、お萩を供えます。どちらも、小さく丸めたもち米に、餡やきな粉、ゴマをまぶしたお餅です。なぜ名称が異なるのでしょうか。それは、季節ごとの花にちなんでいるからです。牡丹の花は、春から梅雨の時期にかけて咲くバラのような派手で大きな花であるのに対し、萩の花は、9月頃に満開になる地味で小さな花です。それぞれのお餅の名前の由来が分かりましたね。

 「棚ぼた」を期待している方は多くいらっしゃると思いますが、なかなかそういった出来事に遭遇することはありません。いつか訪れる千載一遇のチャンスを手に入れるまでは、枝をしならせてうつむきながら咲く萩のように、強かに生きていくことが大切なのではないでしょうか。不透明な時代を生き抜くあなたへ、萩の花言葉「柔軟な精神」を贈ります。最後まで読んでいただきありがとうございました。