日本人の名前に見られる「すけ」の歴史
2024年8月31日
今回もコラムを読んでいただきありがとうございます。
これから、有名な日本人を紹介します。
桜田門外の変で暗殺された「井伊直弼」。
『羅生門』の作者である「芥川龍之介」。
ナルトのライバルの「サスケ」。
何か3人に共通することはありませんか。
そうです。どの名前にも「すけ」が入っていますね。
「すけ」は、日本人の名前に多く使われています。
サスケはともかく、井伊直弼と芥川龍之介の「すけ」は違う漢字です。
他にも、名前に使われる「すけ」は、介、佐、助、亮、弼、輔…と数多くあります。
実は、他にも弐、副、なんかも「すけ」と読むのです。
どうしてこんなに多いのか、疑問に思いませんか?
実はその理由は、はるか昔、701年にまで遡ります。
この年、日本では律令制が始まりました。この際導入された、朝廷の仕組みに理由があるのです。
朝廷の官職は、上から「かみ・すけ・じょう・さかん」に分けられています。
この「すけ」は、役所によって異なる漢字で表されていました。
例えば、上総介(かずさのすけ)、内蔵助(くらのすけ)…など。
(どうしてそんな面倒なことをしていたのでしょう…?)
その後、官職風の名前を子供につける名づけの文化が発生した中で、「すけ」は様々な漢字で用いられるようになったのです。
なんだか不思議な気もしますが、官職が呼び名になる例は古くから多くあります。
例えば源頼朝がいます。
彼は、「右兵衛権佐(うひょうえごんのすけ)」という官位に就いていました。
2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』でも、流された先の伊豆で「佐(すけ)殿」と呼ばれていましたね。
これはまさしく、官職がその人を象徴するものとして使われた例です。
周囲の田舎武士たちは官職なんか持ったこともないので、「佐殿」が指すのは頼朝ただ一人なわけです。
また、源平合戦のお相手である平清盛も、「平相国(へいしょうこく)」と呼ばれていました。
「平」はいわずもがな「たいら」。
「相国」は、当時の中国の、総理大臣に相当する役職のことです。
清盛は太政大臣についていたため、「相国」に似た役職として、ひねりをきかせてこう呼ばれていたのです。
源頼朝や平清盛が、その官職を失う、もしくは辞任してもなお周囲にそう呼ばれ続けた訳は、役職名で呼ぶ日本の文化が土台にあるのでしょう。
このように、「官職=役職」が、その人の地位や権威を象徴する重要な要素だったわけです。
役職を重んじる日本の文化は、現代でも続いています。
上司相手でも気軽にファーストネームで呼ぶ英語圏の文化とは対照的ですよね。
よく言われるように、日本人は肩書を非常に重視し、大切に思うところがあります。
それこそ、役職由来でつける名前が根付いたほどに。(「すけ」以外にも、「じょう」など官職由来の名前はたくさんあります!)
現代人がなにげなくもっている感覚が、平安時代以前からのものに根ざしていると考えると、非常に興味深いものですよね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。