処暑の暑さと「う」のつく食べ物〜帰納的思考で読み解く健康の知恵〜
2025年8月24日
今回もコラムを読んでいただきありがとうございます。
旧暦には、太陽の動きをもとに1年を24の季節に分けた「二十四節気」という暦があります。
その一つである「処暑(毎年8/23~9/7頃)」は、暑さが落ち着き過ごしやすい時期とされています。
しかし、連日35度以上の猛暑日が続く現在の日本の気候には、必ずしも当てはまりません。
なぜこのようなずれが生じるのでしょうか。
私たちが現在使っている「新暦(太陽暦)」は、地球が太陽の周りを一周する期間を1年として計算しています。一方、昔の日本で使われていた「旧暦(太陰太陽暦)」は、月の満ち欠けを基に1か月を決め、季節とのずれを調整するために太陽の動きも考慮に入れていました。そして、この旧暦の中で用いられたのが「二十四節気」です。二十四節気は、約数千年前に古代中国の黄河中流域で生まれたものです。
そのため、現在の日本の気候変動や地域の違いを考慮すると、「処暑」という言葉が示す意味と、
実際の体感にずれがあることは理解できますね。
そんな危険な酷暑が続く中で、夏の風物詩として「う」のつく食べ物がよく話題に上ります。特に、ウリ科のスイカは夏の暑い日に欠かせない存在ですよね。シャリッとした食感とみずみずしい甘さは、夏の暑さを忘れさせてくれます。しかし、なぜスイカを食べると夏バテしないと言われるのでしょうか?
その背景には、昔の人々の優れた「帰納的思考力」が隠されているのです。
「帰納的思考力」とは、複数の具体的な事実や観察から、共通の法則や一般的な結論を導き出す思考法です。
科学的な知識がない時代でも、この思考法によって私たちの生活を豊かにする知恵が数多く生み出されました。
では、昔の人々がどのようにして「スイカを食べると夏バテしない」という知恵を導き出したのか、
その帰納的なストーリーを紐解いてみましょう。
昔の人々の帰納的思考のプロセス
- 事象A(観察): 暑い夏は、食欲が落ちて体力がなくなり、熱中症で倒れる人が多い。喉が渇き、水分を欲している。
- 事象B(観察): 夏になると、畑ではウリ科の野菜(ウリ、キュウリ、そしてスイカ)がよく育ち、たくさん収穫できる。「う」から始まるウリ科の野菜は、どれも水分をたっぷり含んでいる。
- 事象C(実験): 昔の人々は、暑さに苦しむ中で、この時期に採れるスイカを食べてみた。すると、そのみずみずしい果肉が体の熱を冷やし、失われた水分を補給してくれることに気づいた。
- 事象D(結果): スイカを食べた後は、喉の渇きが癒され、体が楽になったように感じた。この経験が多くの人々の間で共有され、「暑い夏にはスイカを食べれば元気になる」という結論が導き出された。
このように、昔の人々は「暑い夏には体調を崩しやすい」「スイカは夏によく採れ、水分が多い」
「スイカを食べると気分が良くなる」という複数の具体的な観察結果を繋ぎ合わせ、論理的に「スイカは夏バテを防ぐ」という結論を導き出したのです。現代の科学では、スイカに水分やカリウム、糖分が豊富に含まれており、熱中症対策に効果的であることが証明されています。
これは、先人たちの経験から生まれた知恵が、論理的にも正しかったことを示しています。
私たちは、普段から無意識にこの「帰納的思考」を使っています。「この店はいつも行列ができているから、きっと美味しいに違いない」と考えるのも、いくつかの観察結果から結論を導き出す帰納的思考です。
このコラムでは、このような身近な事柄を題材に、論理的思考力を養うきっかけを提供します。
皆さんの周りにある「当たり前」の中にも、論理のヒントが隠されているかもしれません。ぜひ、「なぜだろう?」という視点で、探求してみてください。最後までお読みいただきありがとうございました。