愛情の二重奏:母の日と父の日の光と影
2025年5月18日
今回もコラムを読んでいただきありがとうございます。
今回のコラムでは、私たちにとって身近でありながら、少し違った側面も持つ「母の日」と「父の日」について、深く掘り下げてみたいと思います。
5月の第二日曜日に祝われる「母の日」は、温かいカーネーションのイメージと共に、日頃の感謝を込めて母親に贈り物をしたり、一緒に食事をしたりする素敵な日です。この習慣は、20世紀初頭のアメリカで、アンナ・ジャービスという女性が亡き母を偲んで教会で白いカーネーションを配ったことが起源とされています。彼女の母への深い愛情と追悼の想いが、多くの人々の共感を呼び、1914年にはアメリカで正式に「母の日」として制定されました。
日本でも戦後、GHQの働きかけによって1949年に5月の第二日曜日に定められ、今日に至るまで、母への感謝を伝える大切な日として定着しています。
一方、「父の日」は、6月の第三日曜日に祝われます。母の日のようにカーネーションという象徴的な花はありませんが、黄色いバラを贈る習慣があります。父の日は、母の日のように劇的な起源を持つわけではありませんが、20世紀初頭のアメリカで、ソノラ・スマート・ドッドという女性が、男手一つで自分を育ててくれた父を讃えたいと願い、教会で父の日の礼拝をしてもらったことが始まりと言われています。彼女の父への敬愛の念が、徐々にアメリカ全土に広がり、1972年にはアメリカで正式に「父の日」が制定されました。日本でも、父の日は母の日に比べてやや影が薄い存在でしたが、近年では父への感謝を伝える日として、少しずつ認知度が高まってきています。
母の日と父の日。どちらも親への感謝を伝える日であることに変わりはありません。しかし、その起源や象徴、社会的な盛り上がりには、少なからず違いが見られます。母の日は、アンナ・ジャービスの個人的な悲しみと母への深い愛情が原動力となり、カーネーションという美しい花と共に、温かく、感性豊かに祝われる傾向があります。一方、父の日は、ソノラ・スマート・ドッドの父への敬愛の念が発端となり、黄色いバラを添え、やや控えめで、実直に祝われることが多いようです。
この違いは、私たちの社会における母親と父親の役割の違いを反映しているのかもしれません。母親は、愛情深く、献身的で、家庭的な存在として理想化されることが多いのに対し、父親は、勤勉で、責任感が強く、時には厳格な存在として捉えられることがあります。もちろん、これはあくまで一般的な傾向であり、すべての家庭に当てはまるわけではありません。
しかし、母の日と父の日の祝い方の違いには、このような社会的なイメージが影響している可能性は否定できません。
また、母の日のカーネーションの売り上げが非常に伸びるのに対し、父の日のプレゼントは多様化しており、これといった定番がないという点も、興味深い対比です。
母の日は、カーネーションという強力なシンボルがあることで、感謝の気持ちを表現しやすいのかもしれません。しかし、父の日のプレゼント選びに悩む人が多いのは、父親への感謝の気持ちをどのように表現すれば良いのか、社会全体でまだ模索中であることの表れなのかもしれません。
母の日と父の日は、親への感謝を伝えるという共通の目的を持ちながらも、その起源や祝い方、社会的な意味合いにおいて、様々な違いが見られます。これらの違いを意識することで、私たちは、母親と父親という存在について、より深く考えることができるのではないでしょうか。そして、それぞれの日に、それぞれの親への感謝の気持ちを、私たちなりの方法で伝えていくことが大切なのではないでしょうか。最後までお読みいただき、ありがとうございました。